著作権法的に問題になる3つの点を説明する
0.全体像
AIソフトウェアの開発(学習・訓練)や、AIソフトウェアの利用の全体像
画像自動生成の工程は学習フェーズと利用フェーズの2つで構成される
1.他人の著作物を収集し利用すること
学習フェーズ
AIソフトウェアを開発・提供するサービサーに関連する部分
AIIソフトウェアを生成するために
他人の画像や文章などの著作物を勝手に収集して利用することができるか
他人の著作物を勝手に収集して機械学習技術を用いて画像生成には
元となるデータ(著作物)をネット上で収集します
日本著作権法30条の4第2号の権利制限規定
収集されたデータの著作権は通常データの生成者が保有しているため
学習フェーズでAIソフトが使用するには著作権者の許諾が必要
平成30年改正著作権法によって導入された著作権法30条の4第2号
生成に必要な著作物の利用行為(データの複製や翻案)は、
原則として著作権者の承諾を行わなくても可能である
ただし、著作権者の利益を不当に害する場合は不可とした
平成30年には「情報解析」に利用するためなら
原則として著作物を自由に利用できる、とした上に
いずれの方法によるかを問わず、と規定した
そのため、著作物の使用目的に関する限定がないため、
現在では自由にデータを使用できる状態
日本著作権法は国内法(※日本国内に関する法律)
作業者とサーバの両方が国内なら著作権法が適用されます
作業者またはサーバのいずれかが外国なら著作権法は適用されません
利用行為が日本国内であれば著作権法が適用されます
著作権者が日本なのか外国なのか
著作物の利用者が日本なのか外国なのか は無関係で
あくまでも利用行為が国内の場合のみ適用されます
次の問題は
著作権者が使用禁止と明記し、画像生成を制限している場合は
30条の4第2号で営利・非営利問わず著作物の利用行為が可能となるが
著作者が自ら「AI学習に使うのは禁止にします」と表明した場合は
原則、使用するには著作権者の承諾が必要なのですが、
権利制限規定に該当すれば承諾がなくとも利用が可能です
※権利制限規定には
著作物が自由に使える多種多様な条件を規定している
著作者が禁止にします、と表明するだけで契約が成立するかどうか
契約は一方的な表明だけでは成立しない
成立するためには当事者双方の意思が合致することが必要
契約は締結した当事者間でしか契約内容の効力は及ばない
契約を締結していない第三者がデータを利用することは可能
Zは利用規約に同意しておらず利用規約に拘束されないからです。
2.自動生成された画像の著作権
利用フェーズ
AIソフトウェアを利用して画像を自動生成するユーザに関連する部分
自動生成された画像に著作権が発生するか
著作権が発生するのは人間の創作物に限られている
AIの利用により作成されたコンテンツには著作権は発生しない
「人間が創作した」と「AIの利用により作成された」の線引き
人間に「創作的寄与」があったかによって判断される
AIに具体的かつ詳細な指示をしたか、によって判断される
人間が簡単な指示しかしていなければ、
生成された画像がいかに独創的であったとしても著作権は発生しない
現在使われている画像自動生成AIは
短い呪文を入力したら一発で素晴らしい画像が出て来る
「創作的寄与」がなく、著作権が発生しない可能性が高い
詳細かつ長い呪文(秘密の呪文)を唱えて画像を生成した場合は
「創作的寄与」があり、著作権が発生する可能性が高い
通常は何度も呪文を唱えて複数の画像を生成し
その中から好みの画像をピックアップする
明らかに「創作的寄与」が行われている
画像自動生成AIの生成物には著作権が発生する
呪文を法的に保護する方法
呪文自体を著作物として保護する場合
呪文が「読んで意味のある文章」なら著作物である
呪文が文章とは言えないなら著作物ではない
特別な意味を持つ呪文は著作物になる
呪文が著作物に該当しても効果が無い
著作物として管理する手間が大変になる
利用するにしても承諾を得る手間が大変になる
著作物として保護しても従う人はいない
呪文が著作物に該当しても保護できない場合
呪文を不正競争防止法上の営業秘密にし
良い呪文が見つかったら秘匿し
販売・提供する際には秘密保持契約を締結した上で提供する
自動生成された画像の著作権は誰が有するか
画像生成AIソフトウェアの制作者には著作権はありません
画像やデータセットを生成・提供した者にも著作権はありません
長い呪文を唱えて画像を生成した者には著作権が発生する
「呪文を作成した人」と「呪文を使って画像生成をした人」が別人の場合
複雑になってまとめきれず、案は幾つかある
AIソフトを著作者とする
AIソフトの作成者を著作者とする
3.偶然に生成された場合の著作権侵害
利用フェーズ
サービス提供者とサービス利用者双方に関連する部分
学習に用いられた画像と同一の画像が『偶然』自動生成された場合、
著作権侵害に該当するか
サービス提供者は画像自動生成AIというツールを提供し、
サービス利用者は同ツールを利用して画像を自動生成する
学習フェーズでデータとして取集したデータと
利用フェーズで出来上がった画像が同じになった場合のこと
自動生成した画像を利用した利用者が著作権侵害になるのか
仮に利用者が侵害したとなった場合、提供者も責任を負うのか
同じ画像が生成されて著作権侵害になる要件
作風の類似に過ぎない場合
類似性・・・作風・スタイルレベルで類似している場合
類似性を満たさず、著作権侵害には該当しない
表現レベルで類似している場合
類似性を満し、著作権侵害には該当する
必ずしもはっきりしたものではないため、争いになる
依拠性の有無の場合
依拠性・・・他人の著作物に依拠するかどうか
学習用データセットに含まれていれば依拠性あり
既存著作物がパラメータ化されてれば依拠性なし
結論は出ていない
著作権侵害に該当する場合に誰が責任を負うのか
ユーザ
ユーザ自身が既存著作物の複製行為を行っていることになる
私的領域内だと適法
販売・配信した場合は著作権侵害に該当する
ユーザに故意・過失がない場合は損害賠償請求はできない
ツール提供者
学習用データセットの生成・提供行為
データセットは著作権侵害につながる危険性は相当に低い
法的責任を問われることはない
画像自動生成AIソフトウェアの生成・提供行為
十分な量のデータセットを元データとして生成された画像は
類似した画像は極めて偶然にしか生成されない
法的責任を問われることはない
既存著作物と同じ画像が非常に高い確率で生成される場合
類似したデータのみ収集したデータセットの場合
法的責任を問われる
画像自動生成AIソフトウェア生成ツールの提供行為
データの学習によってツールの危険性は異なること
ツールの提供行為を行っただけ
法的責任を問われることはない
著作権以外の権利の侵害
パブリシティ権侵害
有名人の肖像が自動生成された場合
名誉権侵害
実在の人物の顔に裸体を合成した画像が出力された場合
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