日本IBM全面敗訴の深層
書面として残された証拠の重要性が浮き彫りになった
日本IBMは「営業秘密を保護するため」として判決書の閲覧制限を申し立てていたが、
東京地裁が「内容は営業秘密に当たらない」として申請を却下、判決書の全文公開に至った
約200ページの判決書から見えてくるのは、書面として残された証拠の重みが際立つ
スルガ銀と日本IBMの幹部によるステアリングコミッティーの議事録が証拠として引用された
一方で法廷における日本IBMの証言はほとんど採用されなかった
東京地裁がなぜ日本IBMを「プロジェクトマネジメント(PM)義務に違反した」とみなし、
スルガ銀は「協力義務に違反していない」と判断したのか
「Corebank」の採用に際してリスクに見合った検証をしなかった点
・邦銀が基幹系システムに海外製パッケージを採用した例がなかったこと
・日本IBMは製造業や流通業の分野ではパッケージベースの開発経験があるが、
銀行システムではこの手法で開発した経験がなかったころ等は
ITベンダーに
「慎重にパッケージの機能、開発手法、リスク等について検証または検討し、
適切な開発方法を採用」する義務があったとした
「リスクの検証または検討」と「適切な開発方法の採用」を怠った点
(1)要件定義の迷走
日本IBMは当初、現行システムをリバースエンジニアリングする
現行踏襲型のアプローチで要件定義書を作成した
だが、日本IBMはその後「開発手法に誤りがあった」として、
パッケージベースのアプローチである2回目の要件定義を実施
だが、これも十分にパッケージベースの手法に沿っていないとし、
FIS社員を交えたフィット&ギャップ分析を軸とする3度目の要件定義を実施した
(2)性能などの検証不足
プロジェクト終盤、
スイスのテメノス製パッケージ「TCB」を採用する代替案を提示した際、
「CorebankをJava化したもののパフォーマンスが悪いことが判明した」
「Corebankについて日本の銀行の諸制度に合致させることが
難しかったのは事実」などと述べていた
(3)FISとの協力体制の整備不足
Corebankの改変権を持つFISとの協業が不可欠だったにもかかわらず、
FISとの役割分担、作業量、費用などについて十分に検討した形跡がなかった
(4)不十分な情報開示
日本IBMはCorebankの採用に関する上記リスクをスルガ銀に伝えていなかった
代替パッケージを提案する際にも完成時期や費用負担について説明できなかった
東京地裁は議事録を基に以上の事実を認定、日本IBMがPM義務に違反していたとした
日本IBMに対して「強い疑念を抱いても不自然ではない状況が作り出された」とし、
スルガ銀がTCBの提案を受けた段階でプロジェクトの中止を決断したことについては、
「何ら非難に値するものではない」と認定した
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