古史通 01_読法

6月15日(木) 読了
  典拠は明示した
    自分勝手な考えではないことを示し、それらの書物を参照できるようにとした

  簡明を旨とする
    「旧事本記」、「日本書紀」の注については
    意味の優れた一つの説を採用する、疑わしい説や長すぎるものは記述しない

  「古事記」、「日本書紀」に多く拠る
    神名や神号は「日本書紀」から、注釈は「古事記」から採用する
    「古事記」は真名仮名の法で、古いならわしの言葉を記している
    意味を言葉の間に求める際に「古事記」は役立つ

  疑点はそのままにしておく
    いにしえの人の読みや意味の伝わらないものには新たな読みを付けていない
    疑わしいものは暫く置いておく

  諸説裁断には注を付す
    道徳の教えや事実において理義によって断定すべき点は注の下に書き添えた
    僭越ではあるが、あえてその罪を避けることは出来ない

  異書・秘籍は採用せず
    証拠に乏しいものは一切採用していない
    乱れて整わないことばや異端の説はいたずらに書籍を乱すだけ

  べつに「惑問」を用意する
    はっきりと解明していない点は後の世に疑問になる、対話になぞらえて記述する
    つまらないむだ話で注釈すると文章が長くなり見る者に便利ではない

6月8日(木)
  疑わしきは疑問として残すこと
    歴史書とは「事実にもとづいて事を記することにより、
      世の中の人びとに対して鑑戒を示す」ものである
    「旧事本記」を歴史書の初めとする
    「日本書紀」は「旧事本記」によって選び記録されたもの
      「日本書紀」を解釈するに、ことばの意味が解釈できないときには、
        神道は測りがたいとものであって論ずることができないと、言う
      わが国の上古のことは、「旧事本記」に見えているところは、
        実際にあったような、なかったような事柄が多い
      「日本書紀」もまた同じ態度をとっており、いろいろな説を様々に記し、
        それを取捨することは後の世の君子の出現を待ったもの

    わが国では、文を作り句ををかくにあたっては、
     その事柄を述べるために、まず他のことばで形容する
    この類は、文の表現が行き過ぎて本質を歪めていることが有る
      その仮りた所を認め、そのうえで真実とすべきことを見極める必要が有る
    奇異で怪しい事柄も
      太古の素朴であらあらしい習俗を言い継ぎ語り継いできたもの、なのか
      その素朴さが失われた時代に神秘的にしようとして新たにことばにしたのか

  古言と今語の異同
    今も残っていて使っていない古語は
      解釈できるものもあれば、解釈できないものもある
    上古のことを記した書物を見る際には、その意味をことばの間に求めるべき
    上古のことばが、ありのまま今に伝わっているのは、歌詞と地名の二つである

6月1日(木)
  文字伝習のこと
    上古のことを記した書物を読む際には
      そこに書かれてあることの意味をことばの間に求め、
      記されている文字にこだわるべきではない

    上古の世には、いまの文字(漢字)というものは無かった
      先の世から言いつぎ語りついだことを、
のちの人もまた言いつぎ語りついだだけである

    第18代履中天皇・・・初めて諸国に国史フミヒトを置き、言事コトワザを記す
      漢字が使われた最初
      漢字の声音を仮て、わが国の言葉を記した
    第34代推古天皇・・・勅命によって「古記」を編集し「旧事本紀」を選んで進上する
      その字の意味を取って表し、漢字の字音にはよらなかった(倭訓)

  文字にこだわらず、ことばのあいだに真実を求む
      上宮太子と雖も、用字がことごとくその字義にあてはまっていた訳ではない
    第40代天武天皇・・・「古事記」の序文では
      「旧事本紀」が仮に用いた文字によって、異端荒謬の説がとなえられることが多くなった
    第43代元明天皇・・・「古事記」の序文では
      全部を文字の訓ばかりで書けば、内容は古意をそのまま示すものとはならず
      全部を文字の音ばかりで書けば、はなはだ長くなってしまう

    例として、高天原と記されていれば上天や虚空を指すと思いがちだが
      実際は、海を「阿麻アマ」、天を「阿毎アメ」転じて「阿麻」となり
      本来の意味は「多珂阿麻能播羅タカアマノハラ」であり
「多珂のあたりの海のほとり」を指す


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