鬼神論

3月31日(金) 読了
日本名著には鬼神論がないので読み込むのに苦労する

現代語訳がないと細かすぎて読み取れないので
  松野敏之の注釈(PDF)を添える  新井白石『鬼神論』考

1.「鬼神論」を考える

 江戸時代に鬼神について論じた珍しい書。経書・史書・俗書から多く引用し鬼神の存在を積極的に論じる。
   白石は鬼神をどのように解釈し、鬼神と世界との関わりをどのように捉えたかを考察する。

2.儒学者が考える「鬼神」

 伊藤仁斎:朱熹の鬼神論を支持し、「気」の作用として鬼神を理解する
 山崎闇斎:鬼神の神秘的な要素を積極的に認める
 荻生徂徠:鬼神のような知り得ぬものに対して
      無理矢理理解しようとすること自体を誤りとする

 新井白石:亡くなった人の魂魄コンパク(肉体と精神)が
      天地に還元されてゆく働きが「鬼神」

3.輪廻

 白石は、生きている人が動物に変化したり、男女の性が変わるなどの変身譚を肯定する。輪廻や生まれ変わりについては否定する。

 生まれ変わりが有ったとしても、それは鬼神が人に憑依した結果として理解する。生ける物全ては天地万物と通じており、天地・父母の気を受けて生まれてくる。父母のきを受けて「肉体」を形成し、そこに「知覚・精神」が備わる。
   魂が永遠不滅として輪廻するのなら、父母は単に肉体を用意するだけの存在となり、魂に影響を与える存在ではなくなる。だから不滅ではない。

4.祭祀の対象

 白石は「天地ー父母ー我」の繋がりを重視し、自身の父祖を祭ることが重要とする。仏を祭るのは、人が罪から免れ、極楽往生したいという願いだけ。

 人には祭るべき自分の祖霊がいるにも拘らず、自分があることの感謝の念を祖霊に対して抱くことなく、利欲の心から仏を祭ることへと流れてしまっている。

5.家

 仏教による弊害を説く。

 仏教は輪廻の思想、自分が過去にした善報・悪報が現世の報いとなって現れる
 儒教は自分が今幸いであれば、それは祖先からの積善のおかげと認識する

 善行・悪行は自分だけの問題ではなく、家・子孫にまで波及する大きな問題と考えている。


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